PERSPECTIVE

2019年04月18日

中国企业透视(1)小红书 RedBook

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中国経済の持続的な成長やインバウンド需要等を受けて、日本国内でも中国経済に関する報道が随分と増えました。そこで取り上げられる企業も、アリババやテンセントに留まらず、様々な企業が紹介されています。
しかし、以前の批判的な風潮からの反動からか、手放しで礼賛するような報道も散見され、かえって実態が見えづらくなっているように見受けられます。そこで、本コーナーでは、日本で紹介され始めている著名中国企業を取り上げ、その実態と将来の展望、日本企業に対する示唆等を述べていきたいと思います。

第 1 回は、越境 EC を行う企業で知らない者は無い、と言っても過言ではない、RED BOOK(小红书)を取り上げます。

 

Ⅰ.越境 EC の立役者「RED BOOK」

越境 EC プラットフォームの RED BOOK を運営する行吟信息科技(上海)有限公司は、2013 年にスタンフォード大学の MBA を卒業した 2 人の若者が創業。創業から 6 年後の今では月商 10 億元規模に達しており、2019 年 1 月にはユーザー数も 2 億人を突破。破竹の勢いで成長しています。創業当初は、香港等の旅行先における買い物に関する口コミサイトとしてスタートしたのですが、そこから越境 EC へと業態を拡大。現在では自営のみでなく他社の出店も受け入れており、越境ECプラットフォームとして多くの企業が出店するまでに成長しています。日本企業でも、パナソニックや@cosme、ドクターシーラボ等、展開している企業は枚挙に暇がありません。

出店者である日本企業から見た RED BOOK の魅力は、何と言ってもそのユーザーの「量」と「質」です。約2 億人のユーザーのうち、85%は女性。90 年代生まれが 70%を占めており、60%が 1 級~2 級都市に暮らしています。また、ユーザーは皆国内の製品に満足できておらず、かつ新しいもの好き。そして新しいものを試したあとに友人などにシェアすることも好き。つまり、化粧品を始めとする美容関連商品、あるいは菓子等も含めた消費財メーカーからすると、是非ともリーチしたい層が固まっているプラットフォームと言えます。他の越境EC プラットフォームがあるなかで、RED BOOK は手数料など側面から見ると必ずしも理想的とは言えませんが、それでも RED BOOK への出店を望む企業が絶えないのは、囲い込んでいるユーザーに魅力があるためです。

近年では、アリババ傘下の Taobao と連携してユーザー数の拡大を目指したり、より専門的なコメントをするKOL を引き入れてコンテンツの質的向上を目指すなど、絶えず競争力の向上に努めており、周到な企業であると言えるでしょう。

 

Ⅱ.RED BOOK の「不都合な真実」

このように、越境 EC 業界で不動の地位を確立しているように見える RED BOOK にも、実はいくつかのほころびがあります。

1:競争の激化

ご存知の方も多いと思いますが、現在では RED BOOK 以外にも多くの越境 EC プラットフォームが存在します。ネットイース(網易)が運営する Kaola(考拉)や、大手 EC プラットフォームのアリババが運営する TmallGlobal、京東集団の京東全球購。他にも Amazon の越境 EC 等、手強い競合が次々に参入しています。

2:購買促進力の弱さ

こちらは以外と知られていない点かと思いますが、RED BOOK は閲覧利用されることは多い一方、そこから購買につなげる力は弱いのではないか、と言われています。例えば、「極光大数据」の調査によると、2017年 12 月の越境 EC アプリの MAU(マンスリーアクティブユーザー数)は REDBOOK が 1491 万人でトップ。2位が Kaola で 1307 万人ということで、それなりの差を付けていることがわかります。しかし、2017 年の越境 EC市場シェアを見ると、トップは Kaola(21.4%)、2 位は Tmall Global(17.7%)と続き、RED BOOK はわずか6.4%に留まっています。MAU が多いもののシェアが低い、ということは、購買に繋がっていない可能性が高いと思われます。実際、RED BOOK で口コミ情報を見て商品を選んだ後、他の越境 EC サイトと価格を比べて安い方を買う、という購買行動が始まっているとも言われております。もともと口コミサイトとして始まり、マネタイズのために越境 EC を行っている RED BOOK からすれば、頭が痛いところでしょう。

3:動画メディアの脅威

最後に、近い将来のリスクとしては、ショート動画共有アプリの「TikTok(抖音)」の存在が挙げられます。TikTok のユーザーは約 5 億人。うち約 65%が女性であり、そのうち 70%は 20 代の女性です。つまり,冒頭で述べたREDBOOK のユーザー層(若年層女性)というのは、実は TikTok のユーザーと大きく重なっています。しかも、約 5 割は一般ユーザー(プロではない)ため、信頼できる口コミと同様の効果を持つ可能性があります。実際、2019 年 1 月より、TikTok は EC との連動をはじめました。もし仮に越境 EC までターゲットに入るとすると、RED BOOK にとって大きな脅威となりうるでしょう。

以上のようなほころびを見ていると、前段で取り上げた近年の取り組みも、苦境から脱するためのもがきに見えてきます。しかし、Taobao との連携は、冒頭で述べたユーザーの「質」の低下につながる可能性があります。また、KOL の登用やメーカーとの連携促進も、ユーザー発の信頼できるコンテンツ、という元々の強みが失われるきっかけになりかねないものです。単に価格だけで比べられないようにするために、直近では実店舗を開店しユーザー体験の場所を用意しはじめていますが、どこまで効果があるかは未知数です。いっそのこと大手プラットフォームに吸収されるのか、あるいはオフラインの小売店と大型連携に進むのか。RED BOOKは今、大きな岐路に立っているといえるでしょう。

 

Ⅲ.ブルーオーシャンなき中国で生き抜くには?

RED BOOK が苦境に陥っているとはいえ、RED BOOK の経営のレベルが低いということにはなりません。我々がこのような例を見て感じるのは、「中国は『ブルーオーシャン』から『レッドオーシャン』に変わるのが非常に速い」ということです。市場拡大するやいなやアリババ等の大手が参入してくる、ということはもちろん、TikTok のような新興企業が思わぬ方向から攻め込んできます。市場/競争/自社、といった通常のフレームワークではなかなか外部環境を捉えきることができません。中国で生まれた企業であってもそうなのであれば、我々のような日本企業はより注意していく必要があります。

また、もう 1 点申し添えたいのは、やはり中国と日本では情報のギャップが大きい、ということです。日本でもてはやされ、中国現地法人に対して指示が飛ぶときには、既に別のステージへと移行していた、ということはままあります。中国事業の担当者の方や、中国現地法人の方は、可能な限りリアルタイムの情報を仕入れることのできる仕組みを整え、古い情報に基づく誤った判断を防ぐ必要があるでしょう。

 

MUFGバンク(中国)経済週報2019年4月18日第423期CDIコラムより

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