PERSPECTIVE

2020年02月27日

中国企业透视(10)快手

作者:

中国経済の持続的な成長やインバウンド需要等を受けて、日本国内でも中国経済に関する報道が随分と増えました。そこで取り上げられる企業も、アリババやテンセントに留まらず、様々な企業が紹介されています。しかし、以前の批判的な風潮からの反動からか、手放しで礼賛するような報道も散見され、かえって実態が見えづらくなっているように見受けられます。そこで、本コーナーでは、日本で紹介され始めている著名中国企業を取り上げ、その実態と将来の展望、日本企業に対する示唆等を述べていきたいと思います。

第 10 回は、ショートビデオとそのディストリビューターの北京快手科技有限公司が手掛ける「快手」をとりあげます。

 

Ⅰ.みるみるうちに急成長したコミュニケーションチャネルのショートビデオ市場

「快手」は「短視頻(ショートビデオ)」で人気を博しているアプリです。「短視頻」とは、日本ではYoutube などにアップされるビデオ動画です。「抖音」が運営している「TikTok」は、日本でも話題になりました。

この分野は、2016 年には、わずか 1 億人ほどのユーザーだったものが、この数年で急激に拡大し、2019 年には、ユーザー数が 8 億人を超えたようです。

中国では 10 年ほどまえに、「快手」をはじめ、多くのネット企業がこの動画市場に参入し、じわじわと拡大してきました。目下、この分野のトップにいる「抖音」は、2016 年に参入し、2018 年には、先行する「快手」を抜いて、業界トップに躍り出ました。抖音の、1 日平均のアクティブユーザー数は、のべ 5 億人を超えます。2 番手となってしまった快手も、のべ 3 億人をこえる規模ですが、大きく水をあけられてしまいました。

このショートビデオ業界が、これほど成長した一つの理由には、投入されてきた資金の額にも関係します。この業界に投入されてきた資金は2014年から、2018 年までの間に、408 件の案件に対して、714 億元に上ります。とりわけ、2017 年と、2018 年は、それぞれ 123 件に対して、167 億元、78 件に対して 407 億元もの投資がなされました。

 

Ⅱ.日々変化するデジタルのビジネスモデルにおいて、存在感を強めるショートビデオ

この数年で巨額な投資がなされた背景には、従来型の広告宣伝モデルにはないビジネスモデルになったからといっても過言ではないでしょう。このサプライチェーンは、業界の成長にともない複雑になっていきていますが、大きくは、広告主、KOL や、MCN のコンテンツサプライヤー、快手、微信などのディストリビューター、タオパオなどの EC サイトなどによって構成されます。ショートビデオに集まるユーザーへの情報発信力のおかげで、 動画アプリのディストリビューターである「快手」は、いわいる広告主とその広告主が狙うユーザー双方から収入を得ることになります。ユーザーからの収入は、通常の動画視聴のための会費のほかに、特別なプログラムへの収入などもあります。さらに、これ以外に、MCN や、KOL が作成した番組を通じてユーザーをEC サイトへ誘導することによって得られた収益の分配もあります。

ショートビデオに投入される広告は、2019 年には、業界全体ですでに 200 億元をこえたといわれており、今後さらに増加することが予想されます。これらは、ショートビデオ広告的な効果が、広告主に実質的な利益をもたらしていることを示すものであるともいえます。

 

Ⅲ.面的に広がる中国の地方都市への有力な情報チャネルとなるか?

どんな人たちが、動画を見ているのでしょうか?快手と、抖音のユーザーを比較してみると、抖音のユーザーが、準一級、2 級、3 級都市に均等に分散しているのに比べると、快手のユーザーは、4 級都市以下に 4 割以上のユーザーが集中しています。つまり、快手のユーザーの多くは、4 級都市より小さな地方の住民だといえます。

年齢別にみてみると、快手も、抖音も、いずれもその多くは、24 歳以下の若い世代であることがわかります。特に、快手は、18 歳未満のユーザーが、45%にも上りますし、24 歳以下は、75%に上ります。

ショートビデオが、中国に点在する 4 級以下の都市にいる若者へのアクセスルートになっているとすれば、こうした地方中小都市マーケットへの有効なアプローチ手段として、検討に値するのではないでしょうか。

 

MUFGバンク(中国)経済週報2020年2月17日第444期CDIコラムより

想获得更多详情、请点击

联系我们