中国経済の持続的な成長やインバウンド需要等を受けて、日本国内でも中国経済に関する報道が随分と増えました。そこで取り上げられる企業も、アリババやテンセントに留まらず、様々な企業が紹介されています。しかし、以前の批判的な風潮からの反動からか、手放しで礼賛するような報道も散見され、かえって実態が見えづらくなっているように見受けられます。そこで、本コーナーでは、日本で紹介され始めている著名中国企業を取り上げ、その実態と将来の展望、日本企業に対する示唆等を述べていきたいと思います。
第 15 回の今回はデジタルマーケティング分野でグローバルに活躍するBlueFocus 北京藍色光標数据科技股份有限公司をとりあげてみます。
コロナ禍後の世界は、あらゆる人間の行為において「なるべく対面しない」というシンプルではありますが、絶大な影響を与えるルールが加わりました。これからどうなるだろうかと考えたときに、誰もがおそらく疑わないのは、あらゆる局面で「オンラインでデジタル化された何か」を取り扱わなければならなくなるだろうということでしょう。マーケティングの世界も例外ではありません。急速にオンラインへシフトしていくのだろうと思います。
今回は、中国ブランドを世界市場に売り出してきた「藍色光標」(BlueFocus)社を見てみたいと思います。当社は、1995 年に設立され、2010 年に深センに上場し、2016 年からは、3 年連続で世界的な PR 会社トップ 10に選出されています。当社の Web サイトにはグローバル PR エージェンシーとしてのランキングと、世界トップの WARC Effective 100 というランキングが紹介されています。どちらも唯一の中国企業で、第 9 位につけています。
コロナ禍でも成長:今年 4 月末に発表された直近の四半期レポートでは、営業収入総額は、81 億元。前年同期比増加率 45%と大幅な成長を達成しています。コロナ禍で、中国全体の経済成長が、マイナス 7%近くを示していた時期にしては驚くべき数値です。2019 年度の営業収入は、281 億元で、前年比 21%の増加を示していたわけですが、2020 年はさらに加速度をつけて成長をするかもしれません。
この会社の成長は、国際化とデジタル化という 2 つの軸で進んでいきます。しかもそれらを M&A により実現していくことで瞬く間に、世界トップクラスの企業へ成長していきます。
【中国企業の国際化を支援】
当社は、1996 年に設立されました。2010 年に深セン創業ボードに上場した当初は、PR トップ企業をめざし、国内で稼ぎ、海外へ展開するという成長戦略をとってきたといわれます。クライアントの製品を世界に向けて売り出すために、まずは、自らをグローバルな企業へと変革させていきます。
2011 年に、シンガポール最大の財経 PR 会社で、アジアで IR に強い Rinancial PR に出資しました。
2013 年には、英国の Huntsworth の 20%の株式を取得し筆頭株主になりました。さらに、英国ロンドンに本部を置くソーシャルメディアエージェンシーWe are social と、米国のデザイン会社 Fuseprojct をそれぞれ買収しています。
つづいて、2014 年には、カナダで最大の総合広告会社 Vison7 を買収,さらに米国の世論予測企業 Blab へ出資。アジアでは香港最大の独立広告企業 Metta を買収しました。さらに同年、藍色光標傘下の海外本部が米国シリコンバレーで運営を始めています。
2018 年には、BlueInpact という SPAC(特別買収目的会社)による NSDQ 上場を、中国の A 株企業としては初めて実現し、業界の注目を浴びました。
Fuseproject は、工業デザインとブランドデザインを担い、製品に斬新さと、魅力を引き出す役割を、Metta は、中国の特徴をもちつつも、欧米的な考え方をベースに、製品パンフレットや WEB サイトの構築、コマーシャルビデオの制作を、さらに We are Social は、企業の SNS サイト運営戦略を構築し、クライアントの状況に即したプラットフォーム運営ルールや、メンテナンス手法を整備する役割を担いました。Blab が、市場環境や世論を分析しステークホルダーレポートなどを作成しています。
こうして 2015 年頃までに、中国のクライアントが海外展開のために必要な機能を持つ会社をグループ内に取り込み、2015 年から本格的な海外進出マーケティング業務を立ち上げ、Facebook や、Google といったネット巨頭をパートナーとし、中国企業の海外進出を支援してきました。Tiktok の初期の海外進出にかかわる広告代理でもありました。2019 年には、TikTok2019 年度海外進出精鋭パートナー大賞を授与されています。
2019 年には、この海外進出広告業務の収入は、172 億元に達し、前年比 43%増を記録しましたから、当社の中核業務に成長したといえるでしょう。今年も引き続き増加を続けていると言われています。コロナ禍においても、この業務の顧客の多くは、モバイルゲーム、アプリケーションツール、越境EC サイトなどで、景気の影響が比較的少なく、特にオンラインゲームは大幅な拡大をしています。
【広告マーケティング企業からデジタルデータサイエンス企業への昇華】
中国国内においても、多くの企業買収を進めてきました。2010 年に上場して連結対象となった傘下企業は、18 社であったものが、2011 年には、21 社に、2012 年には、41 社、2013 年には、58 社となり、2014 年には、61 社にまで拡大しました。2015 年には、国内でスマホ広告プラットホームの domob(多盟)と、スマホ広告のMadhouse Inc.(億動)を買収しました。バリューチェーンを繋ぐように、買収や出資を続ける当社は、中国のWPP とも呼ばれます。
2016 年、当社は 120 億元の総収入額を記録しましたが、このうちもともと持っていた PR 関連業務は、1/4を占めるにすぎず、約 90 億元は、M&A によって実現したものでした。
2018 年には、会社名を北京藍色光標ブランド管理顧問株式有限公司という名前から、北京藍色光標データサイエンステクノロジー株式有限公司という名前に変更しました。
この時までに、データサイエンステクノロジーを基盤とする業務は、収益の 90%を超えています。さらに、クリエーターの仕事の 20%は、自社開発した AI ロボットが処理しています。もともと従来型の広告業からスタートした藍色光標は、約20年の成長を経て、いわいるデジタルマーケティングをメインとするデータサイエンステクノロジー企業へ昇華したということを意味しているでしょう。
今年になって、中小企業向けのサービスとして SaaS プラットホーム「藍光在線」を開設しています。オンライン上での情報拡散、顧客獲得、需要掘り起こしといった一連のマーケティングプロセスをもっと簡単にやってしまおうと考えられたものです。コロナ禍でオンラインでのマーケティングを重視しはじめた中小企業向けに開発されたもので、クラウドコンピューティング、AI 技術、ビッグデータを使ったオンライン上でのマーケティングツールといえます。
彼らの目指すところは、「すべての企業が藍色光標品質のマーケティングサービスを享受できるようにすること」。ここで成功すれば、これから10年かけて拡大できる市場規模は莫大であり、そうしてはじめて藍色光標が、真の意味でマーケティングサイエンスの企業へなるという大事な一歩であると考えているようです。
【藍光在線サービスの概要】
このサービスが成功するかどうかは、まだ未知数ですが、オンラインでの取引が拡大するなかで、こうしたツールの開発を加速させるでしょう。日本の企業であったとしても、デジタルマーケティンのツールを利用して中国から世界 70 億市場を狙う日がくるかもしれません。
MUFGバンク(中国)経済週報2020年6月23日第458期CDIコラムより
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